ストーリー
事故で視力を失った西村芳則(木村知貴)は、小さな港町で、ときに伯母(内田春菊)に面倒を見てもらいながら生活している。かつて同じ通りの家から一緒に通学していた同級生の大畑(高見こころ)は、東京で役者をしながら、理想と現実の狭間で憂鬱なときを過ごしていた。
ある日、西村は大畑と偶然再会する。町にはゆっくりと陽が落ち、そこで暮らす人々はそれぞれの帰路に着く。窮屈で、美しい、その町を眺める二人は、その景色にそれぞれの記憶と想像を重ねる。
©︎ 2022 空架 -soraca- film
窮屈で、美しい港町で生きる、
視力を失った男。
“視覚に頼らない世界”の在り方と、
一人の青年の生き方を描きとり
話題を呼んだ作品が、
ついに劇場公開。
とある小さな港町で生きる、視力を失った男・西村芳則。さびれても美しいこの町で、感性を失わず生きようとする西村の姿が、周囲の人々の心を振るわせていく──。
障害や介護、地方の疲弊といった厳しい現実を題材としながら、西村の知覚と感情を追うような、観賞者自身が感覚を研ぎ澄ませる独特な観賞体験が、観るものの心を惹きつける。
主人公の西村を演じるのは、多くの映画監督に愛され、数々の作品に花を添えてきた木村知貴。待望の長編主演作となる本作は、映画祭で上映されるや、その強烈な存在感と独特な佇まいがすぐさま絶賛された。
脇を固めるのは、一時帰郷し西村と再会する同級生を演じる高見こころ。西村の母が他界後に、生活の面倒を見ることになった叔母を演じる内田春菊。認知症の進む祖父を演じる外波山文明など、実力派キャストら。監督は、本作で若手作家の登竜門となる田辺・弁慶映画祭、TAMA NEW WAVEでのグランプリなど、6冠を獲得した大西諒。
ゆったりとした独特なテンポで進みながら、人々の生活と葛藤が生々しく炙り出されていく。
事故で視力を失った西村芳則(木村知貴)は、小さな港町で、ときに伯母(内田春菊)に面倒を見てもらいながら生活している。かつて同じ通りの家から一緒に通学していた同級生の大畑(高見こころ)は、東京で役者をしながら、理想と現実の狭間で憂鬱なときを過ごしていた。
ある日、西村は大畑と偶然再会する。町にはゆっくりと陽が落ち、そこで暮らす人々はそれぞれの帰路に着く。窮屈で、美しい、その町を眺める二人は、その景色にそれぞれの記憶と想像を重ねる。
木村 知貴
西村 芳則
1978年秋田県出身。自主・商業の枠に捉われず、映画を中心に活動。本作『はこぶね』にて第23回TAMA NEW WAVEベスト男優賞受賞。近年の主な出演作品に、主演映画『マニアック・ドライバー』(21/光武蔵人監督)、『裸足で鳴らしてみせろ』(21/工藤梨穂監督)、『激怒』(22/高橋ヨシキ監督)、『餓鬼が笑う』(22/平波亘監督)、『ケイコ 目を澄ませて』(22/三宅唱監督)、『ラーゲリより愛を込めて』(22/瀬々敬久監督)、『ちひろさん』(23/今泉力哉監督)、『SEE HEAR LOVE』(23/イ・ジェハン監督)などがある。
高見 こころ
大畑 碧
1984年兵庫県出身。関西を中心にタレント、ラジオDJ、モデルとして活動する中、お芝居の面白さを知り本格的に役者として活動するため拠点を東京に移す。近年の出演作品は、映画『かば』(21/川本貴弘監督)、NHKドラマ『ひきこもり先生2』(22)、『家出娘』(22)、『彼女が成仏できない理由』(20)、『パラレル東京』(19)、Web CM『SEKIDOKO』、JR東日本情報システム(23)。コロナ禍以降は拠点を関西に戻し、役者以外に紙芝居師、作家としても活動中。趣味はアートや手芸等の創作。
内田 春菊
中島 知里
1959年長崎市出身。漫画家、作家、俳優、脚本家、落語家、映画監督として活動。俳優としてのデビュー作は『宇宙の法則』(90/井筒和幸監督)。漫画作品に『南くんの恋人』、小説に『ファザーファッカー』、脚本に女性落語をテーマにした『ひとりでできるもん!』、監督映画に鈴木砂羽主演『おまえの母ちゃんB itch!』などがある。立川談志のBコース弟子で名前は「立川於春之方」。
外波山 文明
西村 滋
1947年信州木曽出身。20歳から演劇を始め1971年「はみだし劇場」旗揚げ。全国放浪やアジア・シルクロードなどで街頭劇や野外劇、テント芝居を仕掛ける。中上健次、立松和平らに脚本依頼して上演も。常に旬の作家との共同作業が話題となる。その後「椿組」と改名。毎年夏の花園神社野外劇は38年目になり新宿の風物詩となる。又、野外劇にとどまらずスズナリなどの劇場公演も積極的に仕掛けている。現在「椿組」を主宰。役者、プロデューサー、演出も。所属事務所はJ.CLIP。
五十嵐 美紀
大畑 裕子
1963年岐阜県出身。49歳の時、日本和装のきもの着姿を競う全国大会で、クイーン部門グランプリを受賞したのを機に映像の仕事を始める。その後、映画24区にて俳優部としての基礎を学び、映画『銃』(18/武正晴監督)、『あいが、そいで、こい』(18/柴田啓佑監督)、『ファンシー』(19/廣田正興監督)、などに出演。2022年には、映画以外に『鹿楓堂よついろ日和』『雪女と蟹を食う』などのTVドラマにも出演。2023年、今作品以外に『アンダーカレント』(23/今泉力哉監督)、『フィリピンパブ嬢の社会学』(23/白羽弥仁監督)など出演作の公開が控えている。
愛田 天麻
大友 千沙
1993年北海道出身。上京後、大学在学中に演劇グループに所属し活動を開始。劇団EXPO2022参加作品『先生は病気でお休みします』(22/高山直美作・演)で主演を務める。音楽映画『ディスコーズハイ』(21/岡本崇監督)、【Made by U25 project」のCITIZEN C7WebCM『我が愛しの純喫茶』(22/西遼太郎監督)等に出演。
森 海斗
浅田 泰斗
1990年群馬県出身。映像作品をメインにフリーで活動。近年の作品には映画『おじドル,ヤクザ』 (22/大川裕明監督)、『15 minutes century Boyz』(ワタナベカズキ監督 /戸塚ヤスタカ脚本)などがある。今秋には下北沢のK2で映画『フライガール』(福嶋賢治監督)の上映を控えている。
範多 美樹
近藤 佐知子
東京都出身。ニューヨークのHBスタジオで演劇を学び、その後、舞台、映画、CM等に出演。主な出演作は、舞台『12人の怒れる女』、ミュージカル『アニーよ銃をとれ』、カーネギーホール公演『シーンズ・アンド・ソングス・フロム・ファニー・ルー』、映画『マニ・ペディ』等。2020年に帰国し、日本で初めて受けたオーディションが本作のオーディションであり、日本での長編映画初出演となる。
高橋 信二朗
友岡 孝二
横浜出身。サラリーマンから俳優の道へ。映画・Vシネマで数多くの作品に出演。参加作品/Vシネマ『日本統一』シリーズ/映画『恋人たち』(15/橋口亮輔)、『おっさんずぶるーす』より主演作『トイレのおっさん』(22/越坂康史)、『ベイビーわるきゅーれ2』(23/阪元裕吾)など。
谷口 侑人
平田 雄大
東京都出身。8歳の時にミュージカルの合唱隊に参加。2019年にミュージカル『big』にキッズダンサーで出演。その後、10歳の時に初めての映像作品『愛をたむけるよ』(19/団塚唯我監督)に出演。『八月は逃げて走る』(22/井上優斗監督)では主演を務めた。主な出演作は『消しかすの花』(20/小池匠監督)、『10年後の君へ』(21/榊祐人監督)。ほかに『春風秋雨』(23/宮本じゅん監督)の公開を控えている。趣味は5歳から続けているピアノ。
木村知貴の目が良い。拒絶でもなく容認でもなく赦しでもなく、ただ存在している。今を生きるということを徹底的に描いた映画だ。それだけで尊い映画だと思う。そのうえで、解放と自由をきっちりと描いていて、近頃、亡くなった多くの友人たちのことを思い出した。
それにしても、木村知貴の芝居で泣かされる日が来るとは、なんてことだ。
瀬々 敬久
映画監督
世の中を窮屈にさせているのは自分の感性かもしれない。盲目の青年から僕は気付かされた。
磯村 勇斗
俳優
孤独と孤高との違いは、人と人との繋がり方にある。盲目である主人公がやや孤高の側にいると思わせるのは、わたしたちの人生もまた常に暗中模索であるからなのだろう。
松崎 健夫
映画評論家
去り行く者ばかりの土地に、留まることもまた人生だ。出て行けない悲しい諦観と、出て行かない意思の強さの両面を、主演の木村知貴が絶妙に醸し出す。盲目の主人公が触覚で世界と繋がるように、ひとつの人生が確かな手触りを伴って伝わってくる。人間味のこもった秀作だ。
矢田部 吉彦
前東京国際映画祭ディレクター
芳則は海の中に糸を垂らすように一つ上の視点から現実を俯瞰している。あなたにも、わたしにも、そういうところがある。この映画は、そんな程度に面倒な私たちが生きる地平を、海の中から空の下に呼び戻す。
「人間はお天道様の下で生きている。そのことを忘れちゃダメだ」私が尊敬する映画監督がよく言っていた。この映画も実はそういう素朴なことが映っているんじゃないか。晴れ渡る空を運んでくるような祈りが。だから好きなんです。この映画が。
小原 治
ポレポレ東中野/
第23回TAMA NEW WAVEゲストコメンテーター
たゆたう水面に映る像のように、私たちはおぼろげな関係性のなかで生きている。 視力を失った男、西村の映画である『はこぶね』は、視覚だけではわからない不確かな事柄を、確かな感触とともに描き出す。
西村が釣り糸の振動を通して海中を感じるのと同じように、『はこぶね』を見る私たちは不確かで豊かな人々の生き様に「触れる」ことになるだろう。
降矢 聡
グッチーズ・フリースクール/映画配給
2017年のゆうばり映画祭で「トータスの旅」(監督: 永山正史)を観て、主演の木村知貴は日本一の映画俳優だと思った。そして今、大西諒監督の「はこぶね」を観て、木村知貴は世界一の映画俳優だと確信した。傑作「はこぶね」、必見。
光武 蔵人
映画監督
あったものがなくなるのはつらい。悲しみに酔う暇もなく次々襲い掛かる現実に、淡々と向き合っていく主人公。彼には、美しい海を見て自分を癒すことすら出来ないのに。
内田 春菊
漫画家・出演《中島 知里役》
わたしの目には、さまざまなものごとが映っている。でもちゃんと見えているのだろうか?西村の生活ぶりを目の当たりにして、もっと耳や手、心をつかって、この世界を見て、確かめていきたいと思った。
山中 美友紀
真鶴出版
空架 -soraca- film
soraca.film@gmail.com